小樽にて


そろそろ温泉が恋しくなった我々は小樽に一夜宿を求め、ビール片手にJR札幌駅より電車
に飛び乗った。進行方向右手に海が見えてきたと思うと間もなく小樽駅に到着である。道には
まだ雪が残っているが、暖かな日和に駅前の通りをぶらぶら歩き始めた。昼ご飯に、かねてより
気になっていた「若鶏唐揚げ」を頂こうと花園を目指して進む我々である。この若鶏唐揚げは
新聞の小樽広告特集には寿司やに混じってよく掲載され、ラジオやテレビで紹介もされ小樽
名物の一つらしいのだ。それを楽しみに高架近くまで来た我々は、ふと傍らにある小さな店に気
が付いた。飲食店らしく、表に小さなメニューボードがあり、ワインの空き瓶が紐に括り付けられて
ディスプレイされている。小さな建物の1階で入り口はサッシのガラス扉で大変そっけないものだが、
なにか妙に気になるのである。丸見えの小さな店内はカウンター席があり、店主らしい人とお客
が一人、親しげに談笑していた。メニューをしげしげと眺めるとイタリアンらしい。お昼のパニーノセッ
トとかカルツォーネセットなどが書かれている。うーん、入ってみたい。好奇心が掻き立てられる。
我々は二人して何度も店内を覗き込んだり、メニューを検討したり、周りをキョロキョロしたりして
いたが、ここはやはり初志貫徹、若鶏の唐揚げを食べることにして後ろ髪を引かれつつ、その店
を後にしたのであった。

花園にあるその店は寿司やだが、若鶏の唐揚げがメインメニューのようでもある。ランチタイムには
お得な定食も用意されいてるので、それを注文して待つことしばし。鶏はけっこうな量で二人で
食べても十分、皮はパリパリ揚がっていて香ばしく、美味しく頂いた。

訳あって、睡眠不足、二日酔いの我々は満腹になるとたまらなく温泉につかりたくなり、タクシー
を拾うと祝津にある今夜の宿に向かったのであった。この運転手さんは訛りが強い。愛想よく色々
話しかけてくれるので、耳をこらして聞き取ろうとするもなかなか理解し難い。なのに我がダンナは
きちんと会話しているではないか。
運転手さん「今日だば○※#●◎▽%☆∴でないが」
ダンナ「そうだねえ、今年はほんと雪多いしね」
運「なして▲£§●※∞■だべ」
ダンナ「うん、それはそうだろうね」
運「だがら◎★¢■※〓▼が?」
ダンナ「ああ、札幌だって同じだし」
さすが、我がダンナは浜育ちだ。感心して、後でそう言うと「いや、オレだって解らなかった。前後の
話から推測して返事してただけさ」とのこと。なんだ、愛想のいいやつだな(^_^;

さて、宿は祝津の小高い岬先端に建つ各室露天風呂付きが売りのホテルである。タクシーが到着
するずっと前から玄関前に人が立って出迎えて下さる。感じいいじゃないか。案内された部屋はまず
まずの広さのツインルーム、早速風呂場を見ると石造りの広い浴槽にはこんこんと湯が湧いている。
24時間いつでも入れるのである。また下には大浴場もあり、こちらも早速つかりに行ったが他には
誰もいなくて、広いお風呂を独り占め、露店風呂から雄大な海が見える。なんて気持ち良いのか。
今晩は何度も湯あたりするまで、湯につかろう。元を取るぞ!やっぱりワタシは貧乏性だ(笑)

翌日は運河沿いを散歩したり、ガラス製品の買い物をしたりしてから昼に寿司を食べて小樽観光
の王道を歩き、ふと昨日の店を思い出したのであった。やっぱり寄って行きたい。昼食はとったが、ワ
インの一杯やつまみくらい食べられるだろう。きのうの道を花園から稲穂まで逆にたどり、くだんのお店
につくと、カウンターに一人のお客さんがあり、店主らしき男性と女性も一人。小さなテーブル席に腰
掛けてさっそくくつろぐ体勢に。グラスのワインを注文して、お鮨を食べてきたことを言うと、親切に夜の
メニューだけど鶏レバーのパテなどいかがですかと勧めて下さったので、お言葉に甘えた。

札幌から来たことや、昨日ここを見つけて、どうしても帰る前に来たかったことなどお喋りして、我々も
飲食店をやってるので面白そうな店を見るとつい入りたくなってと話した。どんなお店ですかと尋ねられ
たので、自己紹介すると、ちょっとビックリしながら、お客さんに聞いて知っていた、とおっしゃった。共通
のお客様があるということが分かり、偶然に驚きつつ世間は狭いとうなづいて、四方山話に花が咲く。
さらに店主が料理を教わったイタリアンのシェフ(女性の方のお兄さん)は札幌でワタシの友人S君が
オーナーのイタリアレストランで一時期シェフをなさっていた事もお聞きし、ますますの世間の狭さに感動
を覚えたワタシであった(^_^;。

店内にいると分かるのだが、道行く人やバスの乗客が皆この店を覗いて行く。やっぱり気になるのであ
ろう。我々も昨日さんざん覗き込んで、店主やお客にさぞ苦笑されていた事だったろな(笑)



雑文記目次へ

HOMEへ