懐かしいあの場所
 街を自転車で疾走していると、フト真新しいビルに気がついた。こんな所にこんな建物があっただろうか。自転車を停めてお洒落なショーウインドをじろじろ眺めながら考えて、気がついた。ここは映画館の跡に建ったビルである。シネマコンプレックス全盛となった今、単館の映画館は市内にはほとんど無くなってしまった。ススキノと狸小路に何館かあるくらいか。モダンなテナントビルに生まれ変わったこの場所には「日劇」があった。札幌の真ん中に大きな絵看板を掲げた映画館らしい映画館だった。こういう映画館の消滅を声高に嘆くほどには、最近ここを利用せずやっぱりとても便利なシネマコンプレックスばかり行っていたワタシだ。とは言うものの、「日劇」が無くなってしまったのはとても寂しいことではある。中学生の時には「ロミオとジュリエット」を観た。もちろんディカプリオではなく、レナード・ホワイティング(ベッドに横たわる彼のキレイなお尻を見てドキドキしたコドモだったワタシ(笑))、オリビア・ハツセイのだ。満員・立ち見の館内だったが、今みたいな入れ替え制では無かったので、おにぎり持参で初回から夜まで何回も繰り返し観た思い出がある。「日劇」は座席の間隔が狭くて膝やお尻が痛くなったので、年を取ってからは二階指定席を利用することが多くなった。ちょっと余分の料金がかかったが、座席もゆったりとして大スクリーンもとても見やすかったことだ。

 色々な思い出のあるこの懐かしい場所がどんな風に変わったか、覗いて見ることにした。ワタシにはまず縁が無いのだが、ローラ・アシュレイやらブルックス・ブラザーズなどのブランド・ショップがゆったりと入っているこじんまりしたビルである。地下に降りると二つの飲食店があった。一つは讃岐うどんの店、もう一つは食事もできるが甘味の店である。これはちょっと嬉しい。ふとした時に、「クリームあんみつ」を食べたくなる事はないだろうか?ワタシはある。こういったものを提供してくれるお店をあまりたくさんは知らなかったので、こんな便利な場所にある事が分かれば食べたい時に食べられるではないか。喜んだワタシは早速店内に足を運んだ。まさにその時、「クリームあんみつ」を食べたい気分だったのである。

 美味しく「クリームあんみつ」を頂き、お茶を飲みながらゆっくりする。お客はほとんどが女性同士だ。甘いものとお喋りを楽しむ女性でいっぱいである。天井が高く立方体の中のようなお店の造りで、にぎやかなお喋りが壁や天井に反響して店内はうるさく感じる程だ。隅の席から楽しげに会話する皆さんを見ながら、この光景もなんだかどこかで見たようなものに思えてきた。お昼時の学食や生協である。女子校のお昼休みはこんな風であったなあ。今このお店にいらっしゃるのは若い方からお年を召した方まで、世代は様々であるが、女性はみんな死ぬまで甘いものとお喋りには目が無いものだ。懐かしい場所で懐かしい風景に出会ったものである。


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