美味しいものは人それぞれ

 


夜食を食べにラーメン屋へと向かった晩のことである。
ラーメン批評家が多いと思われるここ札幌市であるが、この日のラーメン屋も
最近評価の高い1軒のようだ。カウンターだけの小さな店で15、6人も入れば
満席となる。混んでなければ良いがと願いながら、ダンナとワタシは南へ向かっ
て滑る道を急いだものだが、願いかなわず、店の外の風除室までお客がウエ
イティングをしていたのである。美味しいラーメンを食べるためには、待つのも
厭わない人々は多いのであるな。ま、ここは東本願寺前のGほどの行列じゃなし、
私どももおとなしく待つ人となった。

さて、苦労(?)の末、手に入れたラーメンは旨かった。コクのある豚骨スープに
背脂が浮いてまったりしたお味であった。特にこんな寒い日の夜中には格別な
美味しさであろう。

近くで食べていた3〜4人の若い男の子の1人が、自分のどんぶりにに胡椒を
振り入れているのがフト目に入った。「残ったスープに(カシカシ)こうやって(カシ
カシカシ)辛くして〜(カシカシカシカシ)」胡椒の缶をカシカシカシカシふりながら
友達に嬉しそうに説明している彼。年の頃からいって、ワタシの息子といってもよい
くらいの男の子だ。思わず母の心になり、「ヨシヒコ(誰?)、ああ、いくらなんでも
そんなに胡椒を入れたら身体に悪いよ。それにあんまり辛くしたら、舌がマヒして
味も何も分らなくなるじゃないか。母さんはオマエを味覚音痴に育てた覚えはないよ。
もう、止めておくれよ〜」

・ ・と思ったワタシだが、旨そうにスープを啜り、満足げな彼の顔を見ると、そうだ
美味しいものは人それぞれ、人の口にケチはつけまい。と、心に決めたワタシで
あった。



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