美食の読書
コンピューター・ウィルスの仕業で忙しい思いをし、あまり出かけられなかった時に、代わりにとても美味しい
本を読んでいたワタシである。当サイトに遊びに来てくださる方々ならば、きっと皆さんファンであろうと推測
するが、ロアルド・ダールの本である。ダールの書くお話には、美味しい料理やワインがいっぱい登場するが
特に有名なのは「味」Tasteだろうか。スノッブなワイン通の客がブラインド・テイスティングでそのワインの名
前と年代をあてたら主人の娘を嫁に貰う。当てられなかったら、2軒の大邸宅を差し出すという賭けをするお
話である。とても若い娘の好みのタイプとはいえないイヤらしいそのワイン通は見事な消去法のテイスティング
でワイン名をあててしまう。そのワインは「シャトー・ブラネイル・デュクリュ1934年」であった。ボルドー地方
サンジュリアンの第4級格付けのワイン。これを読んだ時、ワタシはすぐにこのワインを飲みたくてたまらなく
なった。だが、初めて読んだのはもうずいぶん昔のことで、このワインがどんな物なのか、いくらするのか、どこ
へ行けば買えるのか、全くわからず、ながらく憧れのワインであったのだ。さて、賭けの賞品にされたお嬢さん
がどうなったか、まだ未読の方のためにそれは内緒にしておかなくてはね。
「執事」The Butlerもワインのお話。成り上がりでお金持ちになった男が邸宅を構え、フランス人のシェフとイギ
リス人の執事を雇い、完璧なパーティを開くのだが、どうも盛り上がらない。執事に相談すると、申し分のない
料理を出しているのに、安価なスペインワインを出しているからだと指摘される。それならばと最高級のワイン
を購入するように命じ、自身も高級ワインの知識を仕入れテイスティングの仕方を習い、そして鼻持ちならない
ワインスノッブへと成長したのである。自分はワインの味が判ると自慢し、ある日のディナーで「このワインは
まさしくシャトー・ラフィットの45年ものの味がする」と断言するのだが、執事から衝撃的なある事実をつきつけ
られるのである。さすがに、ラフィットの45年を飲んでみたいなどとはワタシも軽々しくは言えないなあ。誰か
そんなディナーにワタシを招待してくれればいいのだが。このお話も未読の方は、ご一読をお勧め。
そして、最も食欲をそそられるのは、「オズワルド叔父さん」My Uncle Oswaldだ! 美酒・美食がこれでもかと
言わんばかりに書き連ねられる。中でも、ワタシがこれを読んでどうしても、なんとしても食べたいと思ったのが
雷鳥なのである。ワタシがジビエの中でも雷鳥に特に憧れるのは、このお話を読んだからなのである。主人公
たちはマキシムで食事をするのだが、それはエスカルゴで始められ、旬になったばかりの雷鳥をめいめい1羽
ずつ注文し、レアに焼いて欲しいと伝える。ワインはヴォルネイ。なんでも、赤雷鳥が最高で、世界中でこれほど
柔らかくて風味のある肉はないのだそうだ。これを読んで食べたくならない人があれば、お目にかかりたいもの
だ。もちろん、ワタシは食べたい。そして、今までに一度だけ食べたことがある。これだけは食べたいと一心に
思っていれば、かなえられるものであるね。うふふ。
さて、ロアルド・ダールの世界でワインと美食を楽しんだので、食後のお茶でも頂きたいものである。
この小説を読んでラプサンスーチョンという不思議な名前のお茶をやもたてもたまらず、飲んでみたくなったワタ
シだ。隣室の老人にどんなお茶が好みか問われてヒロインが所望したものは、ミルク、砂糖、レモンなしのラプサ
ンスーチョンをボーンチャイナの薄手のカップで銀のスプーンを添えて。今では、ラプサンスーチョンがどんなお茶
か知っているし、何度も飲んだし、好きなお茶である。なんでも、このお茶はイギリスの上流階級で人気のあるお
茶だということを何かで知り、この小説のヒロインの生い立ちを語る小道具として、うまく使われていたのだと思っ
たものだ。この小説のタイトルと作家名を推測できる方はおありだろうか。もしいらしたら、ワタシと物事の好みが
似ている方でありましょうね。読書と美食について語り合いたいものである。