星付きレストランでワタシが見たもの

 

5月のパリ研修では、美味しいモノ、まずいモノ、高いモノ、安いモノ、色々頂いてきたが、この
体験を有意義なものとして今後に生かさねばなるまい。料理もさることながら、ワタシの職務で
ある所の「サービス」についても色々と参考になる研修であった。私どものような外国人であり、
かつ言葉に不自由なお客に対してもきちんと楽しませてくれる所、そうでもない所、やはり色々
であり逆の立場になってみるのは大変大事なことであろう。

さて、パリでのある日、ミーハーなワタシはかの「鴨料理」で有名な現在はミシュランの星ふたつを
有する高名なレストランにいた。もう、それがどこかは皆さま、お分かりでしょうね? 先の昭和天皇、
現天皇陛下、皇后陛下も訪問なさっている有名店ですよ。この店の窓側の席からは、セーヌ川と
ノートルダム寺院が眺められる。予約時に窓側のテープルを所望される事をお勧めする。もちろん
ワタシもそうした。この眺望の元での食事は確かに価値があるものであった。

ここでの食事はなかなか良いものであった。ホワイトアスパラガスの前菜に(ダンナは手長海老の
サラダ)主采は仔鴨のローストを頂き、お約束の鴨のナンバーを書いたカードも貰ってご満悦のワタシだ。
だが、ここでワタシが特筆したいことは料理のことでもワイン(腹の突き出たおじさんソムリエお勧めの
アロース・コルトン85年はすこぶる旨かったが)のことでもない。皆さまはこのお店のトイレはご存知
であろうか。ワタシはこちらのトイレにいたく感心したのである。さすがに高級レストランである。

デザートを終えたワタシはスキを見てトイレに立った。ワタシの席はちょうどホールの入り口を見通せる
位置にあったのだが、入り口の外側に椅子に腰掛けたハンサムな若いギャルソンが一人いる。そして、
トイレに立つ人がそちらへ近づくと、さっと彼は立ち上がりトイレの方向を案内するのである。そう、彼の
仕事は「トイレ案内係り」であるのだ。こういう高級店には何十人ものスタッフがいて、それぞれ役割が
あるがその上下関係のヒエラルキーもかなりきっちりしたものがあるであろうと想像できる。彼はどの位
「トイレ案内係り」を勤めれば次のランクへ出世できるものであろうか。感慨深いものである。さて、彼の
案内でトイレに向かったワタシは扉を開けて「ここはどこ?!」としばし戸惑ったものである。まず目に
入ったのは毛皮を敷いた寝椅子を置いた広いお部屋であった。見回せば、優美な腰掛けと大きな鏡、
奥には個室のドアがありここは確かに「トイレ」なのであった。ワタシは心底感心する。さすがに歴史の
ある高級店である。ワインに酔って気分が悪くなったり、眠くなったりしたら、あの寝椅子で一眠りしても
よいのであろうか? それとも寝椅子の用途は他にあるのであろうか。例えば、ストッキングが破れたり
したら、あの寝椅子で貴婦人が色っぽく脚を上げたりしながら履替えたりするものであうか?
ワタシとしては、このトイレで星ひとつ上乗せしたいものである。


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