中華料理人


ある夜仕事を終えた我がダンナとワタシは小腹が空いて、何か美味しい夜食を頂きたい
ものと考えた。本当は、イケナイことである。中性脂肪が3ケタにもなるダンナにしろ、腹
回りや頬辺りが福々しさを増しつつあるワタシにしろ、就寝前のカロリー摂取は禁物だ。
しかし、禁断の誘惑に打ち勝てる人間は少ないものである(^_^; 結局我々は、徒歩圏内
にある美味しい中華の店へと歩を進めた。本当にイケナイ我らである。

そこはとても小さなお店で1階にカウンター席と厨房、2階に畳敷きの部屋があり、数卓が
あるくらいだ。今まで何回か訪れたがいつも2階だったので、この日カウンター席が空いて
いるのを見て喜んだものである。なにせカウンター席も3つか4つの椅子があるだけなので、
ここに席を取れば、踊る中華鍋やジャッという景気のよい油切りの音など調理のライブを
間近に楽しめる。ここのお料理は一般的な中華メニューとは一味違うものが、並んでいる。
小さな黒板に書かれたメニューを眺めながら、選ぶのに苦労する。どれも食べてみたくなる
のである。シャキシャキした水菜のお浸しに胡麻ソースをかけたものをつまみに乾いた喉に
生ビールを流し込めば、いやもう生き返る(笑)。揚げたハゼに青豆ソースだの、ツヤツヤと
美しいトンポウロウなども頂きながら、店主夫妻と雑談を楽しんだ。

コミック誌に連載中の「沈夫人の料理人」というマンガがある。昔の中国のお金持ちの家の
我儘で美食家の沈夫人と気弱だが腕の立つ料理人の李三が主人公の、料理薀蓄系のもの
であるが、これがなかなかに面白くてワタシは大好きである。そうしたら、こちらの店主もこの
マンガを愛読してらした。これに登場した料理についてあれこれ語り合っていたのだが、店主
はいつも沈夫人に苛められている李三のことをいまいましげに、「たまには口答えすればよい
ものを!」と言い捨てた(笑)。なるほど、料理人であり男である店主は当然ながらこの李三に
感情移入する訳だ。対してワタシはやはり女である夫人の方である。毎食うっとりするほど美
味しい食事を用意してくれ、誉めれば天国にまで舞い上がり、叱れば地獄に突き落とされたか
のように絶望的な顔を見せ、意のままに感情を操れる、そんな可愛い男が手元にいたらどう
であろうか。いや、全く沈夫人が羨ましいものである(笑)。

さて、締めくくりに麺料理を頂いたのであるが、平打ちのパスタのように幅広い麺を中華では
初めて頂いた。中華にも色々な種類の麺がありますよねー、と話し掛けたら「米で作る麺も
あるんですよ。いやあ、あれは旨いんです、なあ、旨いよな?」と奥様に同意を求め、奥様も
「ええ、本当に美味しいんですよー」と強く頷いた。ひゃー、そんなこと言われたら食べずには
いられなくなるではないか。それはいつ作るのであろうか? ワタシが沈夫人であるならば、す
ぐにも命令して作らせるのだが・・李三ならぬこの店主では言う事を聞いてはくれないか(笑)


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