個々の性格


この秋、札幌を台風が通過した折、稀に見る強風が吹き大木がばたばた倒れた日のこと
である。我々は日頃から親しくさせて頂いている、H夫妻と「ジンギスカン」を食べに行く約
束をしていた。北海道民にとりジンギスカンはコドモの頃から家庭で、学校の炊事遠足で、
長じてからも会社の歓送迎会、キャンプ、忘年会、新年会と折に触れ楽しむ料理である。
市内には大手ピールメーカー経営の「ビール園」が何店かあり、その生ビール飲み放題と
ジンギスカン食べ放題が手頃な価格で頂ける。その中でも「王道でしょう」とH氏がいう、
苗穂近くの大手有名ビール園を選んだ。H夫人は計画・立案がお好きな性格なので、予約
などを一手に引き受けて下さった。観光案内所にわざわざ出向き、パンフレットや循環バス
の乗り場マップ、割引券まで入手するという用意周到、手回しの良さである。

すっかり安心したワタシは、当日も強風に驚きながらも、ジンギスカンを食べることだけを
楽しみに過ごしていたのであるが、夕方H夫人より携帯に「台風ですが、いかがいたしまし
ょうか」と確認の電話が入った。「台風だから中止」という選択肢もあったのだと、初めて気
づきながらも「ワタシどもは構いませんが・・」「それでは予定通りに」ということになったが、
H夫人の気の回り方に比べ、全く何も考えていない自分の性格が浮き彫りになるのであった。

さて、ここのジンギスカン食べ放題のメニューには「生ラム」と「トラディショナル」の2種類の
肉がある。これも両方食べたいということでH夫人に注文して頂いた。「生ラム」はお分かり
であろうが、「トラディショナル」は我々が幼い頃からジンギスカンとして慣れ親しんできた丸
いロール状に整形され冷凍されたラム肉である。ワタシの感覚で言うなれば、これこそがジ
ンギスカンであり、生ラムは焼肉屋で食べるものだ。思い込みが強いのも性格である。頑固
で人の言うことを聞かないのである。サービスの青年が肉の皿を置きながら、「トラディショ
ナルの方は野菜の上に肉を置いて蒸し焼きのようにしてお召し上がり下さい。」と言った。
「ちょっとお兄さん、ジンギスカンを食べて半世紀のワタシに意見するおつもりかい。30年早
いワ。肉は直焼きでこんがり焼くもんだ!」いやいや、諸兄。これは心の叫びである。直接
青年に申し上げてはいない。言いたいこともはっきり言えない小心さも、ワタシの性格であ
る(^_^; 「蒸し焼きも美味しいのよ」というH夫人の声も無視してジュウジュウ焼き始め、結果
鍋にコゲをこびり付かせたワタシであった(笑)。H氏はこまめに肉を焼き、合間に割り箸で
こまめにコゲをこそげ落とし、こまめに脂身を鍋肌にこすり付け、大変キレイな鍋を保っている。
それでもたくさん食べてジョッキもどんどん空にして、しかも話題豊富に会話を進める。素晴
らしい仕事振りだ。

「ビール園」の門をくぐりながら、H氏は「今日は台風だしきっとガラガラですよ」とおっしゃって
いたが、広いホールはジンギスカンを楽しむ人々で満席の賑わいであった。台風があっても
ジンギスカンを食べる事を中止しないのはワタシだけでは無かったかと、少なからずホッとした
ワタシである(笑)。


雑文記目次へ

HOME